同じ列車に乗った人たち

海に行けば、ホームレスの人も海水浴にきている人も同じように風と海と空を感じられるように、景色は誰にとっても平等だと思っていた。

先日、イタリアからドイツに列車で移動したときのこと。

窓からみえる山景色が清々しい。列車の中ではアフリカ系の幼子二人と荷物をたくさん抱えたママがいて、子供二人は列車の中を走り回ったり飛び回ったりずっと騒がしくしている。ママはスーツケース2つに大きなカバン3つ、持てるもの全部持ってきたって感じで、引っ越し?な感じだ。列車が走っている間はよかったが、駅につくたびにどこか不穏な空気が流れた。どの駅にも警察がいて、見張られているような嫌な気配がする。警察に混じって、テレビ局のカメラマンもいる。しばらくすると警察が乗り込んできて、同じ列車に乗っていた人達を電車の端っこに追いやった。さっきまでそのあたりを走っていた幼子2人と大荷物のママは別の車両にいったのか姿が見えない。隅に追いやられた彼らは、おとなしく警察の言うとおりにしながらも動物のような尖った気配をまとったまま、次の駅でぞろぞろと連れ出されていった。

窓からホームをみると、アフリカ系の人ばかり15人くらいが警察に囲まれて立っている。男の人が多い。言葉が分からないのかな、迷子になった子供みたいな顔をして電車と警察を交互に見ている。

ここにきてハッ!(おそい)

まさか、これは移民問題というやつ?まさか、自分がその場面に出くわすとは思っていなかったから油断していた。というか、移民問題について知識がなさすぎて想像もしていなかった。

ドイツのホテルについて、インターネットで移民問題について調べた。貧困や治安や戦争などの理由で新しい土地に忍び込もうとしているのかと思っていたけど、どうやらそんなに単純ではないらしい。この問題でも、よりよい生活をただ求めている人の純粋な気持ちを、利益のために利用している人がいるようだ。過去に難民を世界が受け入れてくれた恩返しという理由で積極的に受け入れている国もあれば、拒否!と宣言している国もある。そういった違いは各国の歴史や成り立ちから来るのかもしれない。

何人かの乗客が連れ出された後も列車は何事もなかったかのように美しい緑の山々の間をかけていく。さっきまで一緒に列車に乗っていた彼らに、一生に一度の大勝負をしかけていた彼らに、この景色は見えていたのかな。景色も平等じゃないときがあるのかもしれない。

目的地に到着して列車を降りると、前の方に幼子二人と大荷物のママの姿が見えた。同じ駅だ!ちゃんといたんだ!ママが荷物と子供とでアタフタしていたので、友達と荷物を運ぶのを手伝いにかけよった。エレベーターまで運んであげたら、ありがとうといってくれた。

この家族が何者だったかは分からない。ちゃんとチケットを買うお金があったのかもしれないし、もしかしたら警察がいる間はうまく隠れていたのかもしれない。わからないけど、どっちでもいい。

この世界には不平等ばっかりで、平等なんて言葉は相当白々しいけど、美しい景色をみて一緒に感動できるぐらいの、それくらいの平等がもっと増えてほしいとおもう。

柿崎 麻莉子 | Mariko Kakizaki

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