物乞いの子供と

慣れてない人にとって、アグレッシブな物乞いというのは対応のしかたに困ってしまう相手だとおもう。金をくれ、食べ物をくれ、から、道端でのアグレッシブな物売りや、音楽家とは呼べないレベルの楽器を持った物乞いたちまで。大人や老人の物乞いは道端に座って手をゆすっているのが普通だが、困り者は子供の物乞いだ。近くまでやってきて、時には腕を握りながらの「give me money.give me food」。大人に言われてやっているのだろう。映画スラムドッグの1シーンが浮かぶ。なんにせよ子供の目をみながら、ぷいと振りほどくのはいちいち心が痛む。

タイの遺跡を歩いていた時、物売りの男の子とタイ人の観光客の新鮮な関係を見た。男の子が買ってよ~とキャンディをもって観光客にたかっている。キャンディはとても清潔にはみえないし、だれも相手をしていない。買う人いるのかな、と思っていると、タイ人の女性がその子供と会話を始めた。タイ語だから何を言っているか分からないけれど、いい雰囲気。ジョークを言っているのか、男の子も笑っている。しばらく話した後その女性は、男の子からキャンディを1つ買い、男の子の弟からもう1つキャンディを買った。

インドの売店で買い物をした時にみた、売店のおじさんと物乞いの子供の関係もよかった。

私が水を買っていると、物乞いの兄弟がやってきて売店のおじさんにねだりはじめた。売店のおじさんは無視するのかなと思いきや、10ルピー(17円)をその兄弟にあげて、「さあ、ほしいものを買え」的な感じで商品を見せている。兄弟は5ルピーでスナック菓子を買って、お釣りの5ルピーと共に去って行った。

こういう出来事をみていると、なんだこういう関係の持ち方もあるのかと気が付く。私も物乞いされるだけでなく、その子供たちと会話がしたいとおもい、なんどかシンプルな英語で試みた。が、もちろんそんなに簡単ではない。相手は「MONEY!FOOD!」とロボットのように繰り返すか、不思議そうな表情を見せるだけだ。良い反応の時は一瞬友達みたいな顔をしてくれる。

都会の道を歩けば何十人何百人といる物乞いをする子供と友達になりたいと言っているわけではない。無視をすることも憐憫の情をいだき何かやることも出来る場面で、相手を人として認めおおらかにコミュニケーションを成立させる。そういう人間的な場面を目撃すると自分の中で淀んでいた部分にはっときづかさせられる。

柿崎 麻莉子 | Mariko Kakizaki

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