エルサレムでGOLEM
ダンスのコンペティションのためにエルサレムへ。雨が降っていて、さむい。イスラエルで冬を感じるとは不思議なもんだ。エルサレムの街並みも以前より落ち着いてみえる。ここ数日降っている雨が町の騒音を流してしまったのかもしれない。ユダヤ教宗教家のペンギンのような正装をしたおじさんたちも、夏にみるよりずっとサマになっている。(夏に長袖スーツとジャケットを着て汗びしょびしょになっている宗教家をみるたびに、人間は変わり者だな、と思っていた)
イスラエル国外で、イスラエルに住んでいることを伝えると怪訝な顔をされることがある。イスラエルが好きなのか?と試すように聞いてくるいやらしいひともいる。日本でも私がイスラエルと関係を持っていることをよく思わない人もいる。私には、いまだに、イスラエルという国とイスラエルの友人たちの顔がうまく結びつかない。
2014年夏に「Golem」という作品を創った。ゴーレムはユダヤ教の伝説上のモンスターだ。創造主の命令しか聞かない泥から生まれたゴーレム。日に日に大きくなっていき、あんまり大きくなりすぎると力が強くなりすぎて人間に危害を加えるから、大きくなりすぎる前に殺されなければならない。
イスラエルでは男女ともに徴兵制があり、特別な理由がない限り、なかなか免れることができない。徴兵しないといい仕事につけないとか、家族の体裁が悪いとか、おじいちゃんたちが建国した国を守るのは自分だとか、そういった理由で高校を卒業したばかりの若者が自分が何をやっているか理解し始めるより先に、拳銃を持たされる。軍隊でのストレスで頭がおかしくなってしまった若者の話もよく聞く。
ユダヤ人を守るために生まれたはずの軍隊が、大きくなりすぎて、守るべき人を苦しめ、他人の命を奪わさせるようになる。まったく、このシステム自体がゴーレムだ。冷たく、システマティックで、人の痛みが感じられなくなる。
明日踊るのは「Golem Couple」。不器用なゴーレムがはじめて友達を作る場面だ。
暴れ始めたゴーレムを止めることは不可能に見える。しかし、ゴーレムの加速に加担しない方法ならあると思う。それは人間的なコミュニケーションがもたらす温もりに気付くことではないだろうか。
国の名前や宗教を聞いてしかめっ面をする人には、システムでないところにある温もりを知ってほしい。
ちっぽけな私が願いを込めてつくった作品を上演出来ることに感謝し、ぱきっと踊ってきたいと思います。
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