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職業ダンサー5年目。練習中に12345678と数えながら歩き、位置をチェックしているときに、ふと、笑ってしまうことがある。こうして数えながら歩くのが私の仕事なのか…と思うとなにか可笑しい。そうしてすぐに、じゃあ、おかしくない仕事はなんだ、という気になって、銀行員だって紙(お金)の枚数を管理するのが仕事なんだし、それだっておかしい!と自分を説得する。

このあいだ、プロダンサーとして意識することは?と質問をされ、踊りや直観がいつでも入ってこれるように心や体を健康にたもつこと、身体の分析的意識をもつこと、とこたえた。そして、言葉にするとかたくるしいな~とおもった。

今やっている踊りの中につま先でS字を描きながらバレエの1番ポジションに入れる動きがある。きょうその部分を踊ったとき、メンバーの1人のつま先がめについた。上半身は別の動きをしているため足先が目立つ動きではないのだが、ずいぶんはっきりしたラインだったので、おもわずほかの人のつま先とくらべてしまった。他の人のつま先はS字風だったり、圧が変化したりしていて、私のつま先なんてSなのかなんなのか(が情けなく揺らいでいるような形だった。それでもう一度その人にめをやると、そのつま先はハッとするくらい正確な数学的曲線を習字のように完璧な圧で描いてみせた。お客さんにはみえない小さな動き。何回やっても同じ軌跡を描くそのつま先をみたときに、ああ、これがプロだな~とおもった。

柿崎 麻莉子 | Mariko Kakizaki

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